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第13話 過去を知るもの

last update Last Updated: 2025-05-21 21:00:34

 はい、という事で私達は仮面を着け、再び祝いの会場に戻りました……と。

 賑やかしい会場をよく見ると、招待客に変装した近衛兵らしき存在がいたるところに散見される。

「流石強国、動きが早いわね」

「そうじゃな」

 私達は各々の手にワイングラスを持ち、それを確認しながら談話していく。

(警備の配置はあらかたすんでるようだし、私達は出来る事をやるしかないか) 

「怪しい人物を探す為にこれから分業して聞き込みといきましょうか」

「了解じゃ……」

 小次狼さんは手早く近くにいた貴婦人に軽い挨拶をして、楽しそうに談話していく。

(流石、小次狼さん。他人の懐に飛び込むのがお上手……。私も負けないようにしなくちゃね……) 

 私も会話する対手を探す為に周囲を見回していくと……。

「おや? お姉さん?」

「えっ!」

 後ろから急に声をかけられ、驚き急いでそちらを振り向く私。

 見ると銀と黒が半々になった装飾仮面をつけているスタイルの良い青年が立っているではないか。

 更によく観察すると、漆黒の燕尾服に銀髪のショートカット、彫刻の様に整った顔立ちと白い肌なのが分る。

「こんにちわお姉さん」

「あっ、どうも……」

 青年は透き通ったコバルトブルーの瞳に、はにかんだ自然な笑みをし、こちらを見つめている。

(このやり取りとこの青年の姿、何処かで?) 

「……ほら、また会えた」

「……あ、貴方はもしや⁈」

 そう、この声間違いない! ラウヌ美術館で会ったあの青年だ。

「えっと、貴方はここで何を?」

(時間も惜しいし、申し訳ないが単刀直入に問いただせていただく!) 

「私はこの国の弱小貴族、イハール=ブラッド。今日は祝いの席に

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